
★展示会名
最上壽之 + 高濱英俊 展~イノチノウタ:アソブカタチ~
★開催期間
2008年6月6日(金)~6月14日(土)
11:30~19:00 日曜休廊
★批評を宿したユーモラスな形態学
彫刻とは、と英国の詩人・評論家ハーバート・リード卿(1893~1963)が言い得て妙な定義を下している。それは一つの材質から別の材質へと意味を置き換えることだ、と。たとえば女性の身体を対象とする場合、そのかたちをそっくりに物体でかたどるのではなく、物体のかたちを通して女性の身体をとらえ直すことが彫刻というわけである。つまりリード卿は、かたちの直訳ではなく意訳こそが彫刻の本質なのだ、と言いたかったに違いない。その意味では最上壽之ほど、かたちの名翻訳家と称したくなるような彫刻家もいないだろう。木を主素材とする彼の彫刻は、決して対象のかたちをそっくり模したものではないが、さりとて純粋抽象の彫刻とも似て非なるものだ。歩行したり、横たわったりといった人間のしぐさをどこか想起させるように、それは生きて在ることと深くかかわり、その実感をさまざまのかたちへと翻訳したものであろうから。
いや、それだけではない。美術評論家・中原佑介がいみじくも「作品が話している彫刻語」と指摘した最上の作品タイトル、たとえば擬音語や擬態語までもひっくるめたオールカタカナ文字のタイトルが示すように、彼は物のみならず言葉によっても、その生の実感を独自のかたちへと翻訳し得る希有な達人なのだ。最上のつむぎ出すユニークな物のかたち、言葉のかたちは、どこまでもカラッとした軽妙洒脱なユーモアに満ちあふれ、権威や権力を笑い飛ばし、通念を脱臼させていくかのようで爽快この上ない。しかし、その笑いと挑発の後に訪れるのは、決してしらじらとした虚無の荒野なぞではなく、生の温もりをほんのりと漂わせた世界だろう。物と言葉の絶妙な二重奏が織り成すこの特異なモルフォロジー(形態学)は、ここに出品された木彫やオブジェ、ドローイングからも存分に味わえるはずである。
言葉といえば石彫家の高濱英俊も、長きにわたって水というモチーフにこだわり、水の語る言葉に耳を傾けてきた人だった。リード卿にならって彼の彫刻を、石に置き換えられた水のかたちと呼びたくなるほどに。何が高濱をして、水なる主題に向かわせしめたのか。それは「水の言葉は地球の内なる声に他ならない」という彼自身の記述に尽くされてもいよう。もちろん水の惑星という環境論的な認識を度外視するつもりはないのだが、ここでは「地球の内なる声」を「人間の外なる声」と読み替え、近現代文明下の人間至上主義に対する批評的意識の発露と受け取ってみたい。というのも、断片化されたかたちや複合的な彫刻のつくりが、全一的な人間像とは対極をなすように思えるからだ。曲線を基調とし、なめらかな表皮とくねくねしたユーモラスな形態に特徴づけられたそれは、まさしく流動する水のような自在感を目に焼きつけていく。
三田晴夫(さんだ・はるお)
★開催場所
南青山 土火(どか)
http://www.dokart.com
〒107-0062 東京都 港区 南青山7-1-12
電話:03-3407-3477 FAX:03-3407-3341
JR渋谷駅東口より徒歩18分
表参道駅/B1出口より青学会館経由、六本木通り 徒歩18分
バス/渋谷駅東口より都バス新橋行き「青山学院中等部前」下車 徒歩3分
日赤医療センター行き「青山学院初等部前」下車 徒歩4分
アクセスマップ http://www.dokart.com/studio.html#map