
★展示会名
岡田忠明・高濱英俊 展~黒と白の詩情~
★開催期間
2008年10月17日(金)~10月25日(土)
11:30~19:00 日曜休廊
★既成の美意識や時流に抗する志
勝手な推測でしかないが、自作の画題を「淤能碁呂(onokoro)」と呼ぶようになった時点から、岡田忠明には自身の絵画の向かうべき道が、はっきりと見えていたに違いない。自分の意識を規定してきた絵画史上の知を一切ご破算にして、白紙状態から自前の絵画をつくり直していこうという覚悟のようなものが。「淤能碁呂」とは「古事記」の国生み神話に出てくる、イザナギとイザナミが海水をかき回した矛の先から、塩がしたたり落ちて誕生した最初の島の名である。その名を冠した絵画には、先達である西洋絵画への対抗心のようなものも感じられるが、より共感すべきは、あくまでも絵画の原点に立ち戻ろうとする自覚の方であろう。
大理石の粉末や炭酸、硫酸のカルシウム、諸顔料を膠で溶いた色材づくりに始まり、無から何かが始まるような天地創造を思わせる厳かな画面づくりに至るまで、そのことは「淤能碁呂」シリーズの作品群から如実に見て取れる。彩色された自然木をはり付け、白と紺による陰陽的構造をはらんだ初期作品は、とりわけそんな感慨に誘う。岡田の軌跡は、画面から余分な要素を振り捨てながら、ここ一両年に発表された対照的な二系列へと展開してゆく。一方では、赤の線を仲立ちした白と黒の矩形色面の対比が静寂の中にもはりつめた緊張感を漂わせ、他方では、細い線形が空間を胎動させて、そこらに発生の気をみなぎらせていた。さて、今回はどうなるか。
このところ志ある彫刻家たちによる自主運営の展覧会の動きが、にわかにクローズアップされてきた。マンガやアニメに刺激を受けた「かわいい」、そしてちょっと不気味でシュールなキャラクターを描いた絵画の流行。それが不当なことに彫刻にも及んで、フィギュア系の流行と一線を画する真摯な造形が相手にされなくなったからである。時代に流行があるのは当然としても、世の中すべてがそれに染まってしまうのはやはり空恐ろしい。そうならないためにも、フィギュアにはない彫刻の醍醐味を人々に伝えるべく、ここはぜひとも彫刻家たちに踏んばってもらわねばならないところだ。DOKAでは今年2度目の発表となる、石彫家の高濱英俊にも。
もちろん高濱は、今回の会場でも彫刻の本領が奈辺にあるかを教えてくれるだろう。石の塊を割り、彫りえぐり、研ぎ磨く手仕事の反復の中にしか、それが受胎しないという真実を。この彫刻家が「水」の流動性を形象化の柱にすえてきたことについては、前回の発表時に言及したのでここでは繰り返さない。だが、どこか人体を思わせもしたり、動植物のようでもあったりする、可変的かつ有機的なモルフォロジー(形態学)の特異さは、何度指摘してもし足りないくらいである。その意味で高濱は、古典的均整美は自分の目指すべき世界でないとして流動的形態にこだわった現代彫刻の開拓者、ヘンリー・ムーアの衣鉢を継ぐべき一人なのかもしれない。
三田晴夫(さんだ・はるお)
★開催場所
南青山 土火(どか)
http://www.dokart.com
東京都港区南青山7-1-12 電話:03-3407-3477
JR渋谷駅東口より徒歩18分
表参道駅/B1出口より青学会館経由、六本木通り 徒歩18分
バス/渋谷駅東口より都バス新橋行き「青山学院中等部前」下車 徒歩3分
日赤医療センター行き「青山学院初等部前」下車 徒歩4分